契約
〜Why...〜
何故貴女は魔族じゃない。
何故僕は人間じゃない。
もし互いがもう少し近しい存在であったなら、こんなに悩むことでなかったでしょう。
何故貴女は魔族と戦わなければならない。
何故僕は貴女と殺し合わなければならない。
貴女が僕以外の存在に殺されるくらいなら……いっそこの腕の中で……。
でも僕にはできない。貴女という光を知ってしまったから。
命短い貴女の一生を僕と過ごしたとしても、僕にとってその刻は刹那に等しい。
それでも貴女が欲しいから……
今宵僕は、貴女のもとへ。
〜Darkest〜
「……いるの?」
闇の中きしむベッドに腰掛けたまま、あたしは言った。
「……ええ、いますとも」
言うと、闇色をした魔族はあたしにはっきりとした姿を見せた。
「今日は何の用。
……あたしを殺しにきた?」
あたしは何の装備もないまま、ゼロスを見た。
その瞳は、まっすぐにあたしを見つめていた。
──そして、ゆっくりとあたしに歩み寄ってきた。
「──リナさん、僕と契約を交わしませんか?」
「契約?」
あたしは眉をひそめた。
「……魔族との、不死の契約です」
そう言った顔は口元こそ笑っていたものの、何の表情も浮かんではいなかった。
「悪いけど──」
「──不死には興味が無い……ですか?」
「ええ」
あたしはきっぱりと言った。
「……リナさん……」
ゼロスはあたしの名を呼ぶと、さらに一歩前に出て、座ったままのあたしに顔を近づけた。
「……駄目なんですか?」
「あんたと契約して、なんのメリットがあるっていうのよ」
「僕は貴女と一緒にいたい──そんな理由だけでは駄目なんですか」
あたしが弾かれたように顔をあげると、ゼロスはあたしの頬にその唇を寄せた。
〜Moon〜
……体温の伝わらない、冷たい唇。
「…………んでっ……!」
「……え?」
ゼロスはあたしの顔を覗き込んだ。
「──あんたは魔族で、あたしは人間なのよ!?
どうしてあきらめさせてくれないのよ!」
あたしが溜め込んでいた吐き出すと同時に、あたしの頬を涙が伝った。
「……それは……僕が諦めきれないからです。
でも貴女は命短い存在。だから──」
「──あたしと──不死の契約を?」
「そうです。これは魔族とか、全く関係ない、僕個人の判断です」
ゼロスは柔らかく微笑みながら、だが真剣に言った。
「…………だったら……いいわ」
「──え!?」
ゼロスはとても驚いたようだった。
「じゃあ──行きましょう。
……僕と一緒に」
差し出されたゼロスの手を軽くにぎりしめ、あたしたちは夜の闇に躍り出た。
妖しくも美しい深紅の満月が、あたしたちをひそかに祝福していた。
────あとがき────
旧サイトにて、玲奈さんキリリク「ゼロリナ」
やっぱりリナとゼロスって、限りなく味方に近い敵かつ、限りなく敵に近い味方っていう立ち位置が好き。
