ホントノキモチ
今日は野宿だ。赤々と燃える焚き火をはさんで、男と少女がいた。
少女はよほど安心しているのか、真っ黒なマントで小さな身体を覆い、安らかな寝息をたてている。
そんな彼女を見ながら、彼は悩んでいた。
彼──というのは、リナの相棒で金髪長身、容姿端麗。頭の中身はゾンビ並、ガウリイ=ガブリエフのことだ。
「……これ……どうするかな……」
誰に言うでもなくそう言うと、ガウリイはズボンのポケットから小瓶を取り出した。
まるで熟れた苺のように真っ赤な液体が小瓶一杯に入っていた。
──リナさんのほんとの気持ちを知りたくないですか?──
ある野宿の日、オレの前に現れたゼロスはこう言った。
オレは二つ返事でうなづいた。
──ちょうど面白そうな薬が手に入ったので……これを飲めば、リナさんのほんとの気持ちがわかるかもしれませんよ──
ゼロスは妖しく笑いながら言った。
──だからそれをリナに飲ませようっていうのか──
オレはゼロスに食ってかかった。
いくらリナの気持ちが知りたいとはいえ、もしその薬でリナに何かあったら……!
──いいえ。飲むのはリナさんではなく、ガウリイさんですよ──
それだけを言うと、ゼロスはオレの前から姿を消した……この小瓶だけを残して。
オレは隣にいる愛しい彼女の顔を見て、どうしても彼女の気持ちを知りたくなった。
時にオレを驚かせる程の強さを持った、18才の少女の全てを。
そしてオレは、紅の色をした液体を口に運んだ──
「──まさか、本当に飲んでしまうとは……ねぇ?」
ふふ、と笑いながらゼロスは言った。
あたしは燻る焚き火の向こうに横たわっているガウリイと目の前に居るゼロスとを交互に見ながら──
「──何を考えてこんなことを! よくもガウリイをっ……!!」
言って歯を食いしばる。
「何を考えて……?
そんなこと決まってるじゃあないですか。貴女を魔族の仲間として迎えるには、どうしてもガウリイさんが邪魔だったんですよ」
いけしゃあしゃあというゼロス。
「──誰が魔族の仲間なんかにっ!」
あたしは吐き捨てるように叫んだ。
あたしはもはや火の消えた焚き火を飛び越えると、ガウリイがその腰に下げていた斬妖剣を引き抜く。
「──ガウリイ……!」
あたしは殺気のこもった瞳でゼロスを睨んだ。
「ほう、その剣で仇を討とうというのですか? できますかね、貴女に」
ゼロスから凄まじい瘴気が放たれる。と同時にすばやくあたしに近づく。
──疾いっ──
どぐっ!!
「──が……はっ!」
ガードする間も無くゼロスの杖の先があたしのみぞおちに当たり、あたしは片膝をつく形でゼロスと向き合った──!?
──いない!
ぐいっ!
「……あうっ!!」
あたしの自慢の髪の毛が後ろから引っ張られる。しまった、空間を渡って後ろにいたか……!
「……これが最後ですよ、魔族になりませんか?」
髪の毛を引っ張ったまま言うゼロス──だがっ!
「はあああっ!!」
あたしは右手に持っていた斬妖剣を振り向きざまゼロスに向かって斬りつけた──
がこっ!
ゼロスは杖で斬妖剣をガードする。
「──でえぇぇい!」
あたしは左手に持っていたショートソードで、マントごとゼロスの腹を貫いた!
──もちろん、事前に呪文で魔力強化した魔法剣である!!
「なっ!? ぐあああっ!!」
さすがに効いたか、腹を押さえる……まだっ!
ざんっ
今度こそあたしは右手の斬妖剣でゼロスを斬りつけた!!
「があぁぁぁぁぁ!」
獣のような悲鳴をあげ、中空に逃げるゼロス──逃がすかっ!
「黒妖陣っ!!」
ばしゅうっ
しかし、あたしの放った呪文が命中する前に、ゼロスは闇に溶けた。
「……逃がした……か」
虫の音と独特の静寂が落ちた森の中、あたしは立ち尽くした。
焚き木の横で目覚めることの無い眠りに落ちているガウリイの頬にそっと触れる。
とても冷たく、人形よりも感情の無い端正な顔。
「──がう……り……いぃ……」
あたしは横たわったままのガウリイにしがみつき、泣き声を押し殺した。
ヒュウウウゥゥ
まだまだ秋口だというのに、嫌に冷たい風が吹く。
「……………………おやすみ、ガウリイ」
あたしはガウリイの唇に、自分のそれを強く押し付け、すぐに放した。
そして──あたしもガウリイの隣で、眠りにつこうとした──
「──リナ!?」
長く……一緒に居すぎたせいだろう。ガウリイがあたしを呼ぶ声が聞こえる。
「……リナ?」
不思議そうにあたしを呼ぶ。そしてもぞもぞ、と動いた。
──っ!──
「ガウリイ?」
あたしはおそるおそる、ガウリイの名前を呼んだ。
「──どうしたんだよ、リナ?」
いつものガウリイだ……
安心してしまったあたしは、ガウリイの横でそのまま泣きじゃくった。
その後、あたしたちの間柄は少し変わったのかもしれない。でももしかしたら変わってないのかもしれない。
「──まさか、本当に飲んでしまうとは……ねぇ?」
ふふ、と笑いながらゼロスは言った。
あたしは燻る焚き火の向こうに横たわっているガウリイと目の前に居るゼロスとを交互に見ながら──
「──何を考えてこんなことを! よくもガウリイをっ……!!」
言って歯を食いしばる。
「何を考えて……?
そんなこと決まってるじゃあないですか。貴女を魔族の仲間として迎えるには、どうしてもガウリイさんが邪魔だったんですよ」
いけしゃあしゃあというゼロス。
「──誰が魔族の仲間なんかにっ!」
あたしは吐き捨てるように叫んだ。
あたしはもはや火の消えた焚き火を飛び越えると、ガウリイがその腰に下げていた斬妖剣を引き抜く。
「──ガウリイ……!」
あたしは殺気のこもった瞳でゼロスを睨んだ。
「ほう、その剣で仇を討とうというのですか? できますかね、貴女に」
ゼロスから凄まじい瘴気が放たれる。と同時にすばやくあたしに近づく。
──疾いっ──
どぐっ!!
「──が……はっ!」
ガードする間も無くゼロスの杖の先があたしのみぞおちに当たり、あたしは片膝をつく形でゼロスと向き合った──!?
──いない!
ぐいっ!
「……あうっ!!」
あたしの自慢の髪の毛が後ろから引っ張られる。しまった、空間を渡って後ろにいたか……!
「……これが最後ですよ、魔族になりませんか?」
髪の毛を引っ張ったまま言うゼロス──だがっ!
「はあああっ!!」
あたしは右手に持っていた斬妖剣を振り向きざまゼロスに向かって斬りつけた──
がこっ!
ゼロスは杖で斬妖剣をガードする。
「──でえぇぇい!」
あたしは左手に持っていたショートソードで、マントごとゼロスの腹を貫いた!
──もちろん、事前に呪文で魔力強化した魔法剣である!!
「なっ!? ぐあああっ!!」
さすがに効いたか、腹を押さえる……まだっ!
ざんっ
今度こそあたしは右手の斬妖剣でゼロスを斬りつけた!!
「があぁぁぁぁぁ!」
獣のような悲鳴をあげ、中空に逃げるゼロス──逃がすかっ!
「黒妖陣っ!!」
ばしゅうっ
しかし、あたしの放った呪文が命中する前に、ゼロスは闇に溶けた。
「……逃がした……か」
虫の音と独特の静寂が落ちた森の中、あたしは立ち尽くした。
焚き木の横で目覚めることの無い眠りに落ちているガウリイの頬にそっと触れる。
とても冷たく、人形よりも感情の無い端正な顔。
「──がう……り……いぃ……」
あたしは横たわったままのガウリイにしがみつき、泣き声を押し殺した。
ヒュウウウゥゥ
まだまだ秋口だというのに、嫌に冷たい風が吹く。
「……………………おやすみ、ガウリイ」
あたしはガウリイの唇に、自分のそれを強く押し付け、すぐに放した。
そして──あたしもガウリイの隣で、眠りについた。
────あとがき────
2013/12加筆修正。
バッドエンドのほうがお気に入り。余談だが、実は翌日リナがガウリイを山に埋める。
