新井みりんによる神坂一作品の個人ファンサイト。

邂逅

 屋上にごろり、とねっころがり、あたしは退屈していた。
 給食五人前をぺろりと平らげ、食後のおやつはアメリアが買いに行ったからいいとして、どうも暇で仕方なかった。
 ……理由は一つ。
 授業の内容だろう。なんで竜破斬さえも使いこなすあたしがいまさら火炎球の練習をしなければならないのだ。
 まったくもってあのゾルフとかいう教師の授業は面白くない。まあそれは他の授業でも一緒だが。
 唯一暇でない授業といったらガブリエフ先生の化学だろう。あの先生の授業はわかりやすく、とてもおもしろいのであたしはサボったことが無い。
 あ。サボる、というと聞こえが悪いかもしれないが、この学園──神坂学園は完全な実力主義で、定期考査の結果さえ良ければ、別に多少出席日数が足らなくても文句は言われないのだ。
 ……それでも、あたしのように超優秀な成績でなければそんなことも出来ないが。
「──リナー! アントワープのプリン売り切れてたから、ブラウニー買ってきたけど……食べる?」
 アメリアが購買から帰ってきた。この学園、もともとは給食制なのだが、購買でパンやお菓子なども売っている。

「──えー!? 特製プリン売り切れてたのぉ?
 ……まあいいか。ブラウニーとアメリアのミニアンドーナツ食べれば」
「ええ〜!? わたしのアンドーナツ食べるのお?」
「よお」
 給食のトレイを片手にあたしの隣にやってきたのは、ゼルガディスだった。
「あら、珍しいわね。ゼルが給食食べるなんて」
 別に給食がまずいというわけではない。単にゼルがパン派なのだ。
「ああ、次の選択授業……ロディマス教諭が定年するのに合わせて、これからはガウリイ=ガブリエフが担当するらしいからな」
「うっ」
 あたしは思わずアンドーナツを喉に詰まらせた。
 なるほど、いくらゼルガディスといえど、パンだけではスタミナがもたないだろう。
「──あら、化学の先生が剣術なんてするの? 確かにあの先生なら出来そうだけど」
 アメリアの意見をよそに、あたしは呆然としていた。
「はあ……だったらこんなにご飯食べるんじゃなかった……」
 以前選択授業にガブリエフ先生が監督にきたとき、ほとんどの生徒が体力が保たずに地面に転がっていた記憶はまだ新しい。
 それでもなんとか立っていたのはあたしとゼルと別の学科の女の子、それと一緒に授業を受けていた上級生三人だけだったが。
「──じゃ、わたしは次の場所武道館だから……また後でね!」
 アンドーナツを一つ口にほおばり、アメリアは元気に走っていった。

 ……はああああぁぁぁぁぁ……
 あたしとゼルは絶望的な気持ちで剣道場へと向かっていた。
 すると、後ろから同じようなため息が聞こえた。
 見ると、輝く金髪を揺らしながら、同い年くらいの少女がゆううつそうに歩いていた。
「あの……あなたも剣術選択よね?」
 あたしは彼女をはっきりと覚えていた。彼女も以前ガブリエフ先生の授業を受けて、立っていた人の一人だ。
「──ええ。現代兵器研究二年、サミィ=マリオンよ。
 あなたたちは……うちの科では見たこと無いけど?」
「あたしはリナ、リナ=インバース。総合魔術二年よ。
 こっちはゼルガディス」
「よろしく」
 ゼルはかるく目を合わせただけだったが、サミィはあまり気にしなかったようだ。
「こちらこそ。
 ──はああぁぁぁ、今日の監督の先生ってガブリエフ先生よね……?」
「そうらしいわね……はぁぁぁぁ」
 同じようなため息をつき、あたしたちは肩を落とした。
 この選択授業は、高等部の全学年、全学科が同時に受ける。すでに無駄に邪魔な数の生徒が剣道場の入り口にいた。

「……うそ……剣道場のカギ開いてないじゃない……」
 あたしはさらに肩を落とした。
 しかたなくあたしたちは蒸し風呂状態の中、隅っこでしゃがもうとした──
「──いやー、悪い悪い」
 金髪を揺らし、カギを持って現れたのは容姿端麗、背の高い男。
 瞬間、入り口の前に群がっていたほとんどの女子と、ごく少数の男子から黄色い悲鳴があがる。
 総合魔術学科化学教師、ガウリイ=ガブリエフだ。
 そしてあたしたちが中に入ると、横手から声をかけられてた。
「──ようリナ。暴れてないか?」
 凄まじい殺気のこもった視線があたしに向けられる。
「──気安く話しかけないで」
 あたしは見向きもせずに言った。
「そんなこと言うなよ。別に知らない仲じゃないんだから」
 ぎぎんっ
 ああっ! 視線が痛ひっ!!
「──行きましょゼル、サミィ」
 あたしはガブリエフ先生の周りに群がっている女達、別名ガブリエフ親衛隊の視線から逃げるようにゼルとサミィを促して先へと歩みを進めた。

 今日の授業も凄まじいメニューだった。
「……グラウンドを三十キロ走って筋トレ五セット、終わった者からガウリイと手合わせだと!?」
「死ぬわね」
「………………」
 驚愕するゼル。冷静に物騒なことを言うサミィ。言葉も出ないあたし。

 授業中に帰ってきた者はごく少数だった。
「はぁ……はぁ……殺す気か……」
「……はぁ……何とか帰ってこれたわね」
「ぜぇ……ぜぇ…………あんの馬鹿……殺ス」
 やはり下級生が帰ってくる気配は無く、剣道場に帰ってこれたのはあたしたち三人とやはりバテバテの三年生だった。
「……ガウリイの大馬鹿野郎、俺のかわいいミリーナがもし脱水症状を起こしたらどうすんだ!」
 まだ割と元気な黒い髪で目つきが悪い先輩が言った。
「誰があなたのなんですか……はぁ……はぁ……」
 なぜかしっかりとツッコミを入れつつ、ポニーテールにした銀髪が美しい、色白の先輩が言った。
「……はぁ。ガウリイの野郎……俺たちは帰ってこれたからいいとしても、後輩たちはどうすんだ」
 何故か魔道士が着るような真っ黒なマントを運動着の上に羽織った、栗色の髪の先輩が言った。
「──よう、ちゃんと帰ってこれたな。
 ……………………じゃあ筋トレ五セット」

『あほかあぁぁぁぁぁぁ!!』

 あたしをはじめとした何人かの声がハモった。あたしとサミィ、目つきの悪い先輩と黒マントの先輩だった。
「──ガウリイっ! 馬鹿なこと言わないでよ!!」
「やっとガウリイって呼んだな」
 あたしに顔をぐい、と近づけるとガウリイは意地悪く笑った。
「だったらどーしたってぇのよ!」
 怒りの収まらないあたしは、ぎんっと睨みながら言った。
「──だってリナ、この学園に入ってからオレのことずっとガブリエフ先生って呼んでたろ。
 ……あれ言われるたびにくすぐったくてなぁ…………前みたいにガウリイって呼んでくれよ」

「──はいはい。わかったわよ」
 あたしは頬をぽりぽりとかきながら言った。
「ガウリイ、まさかそのために俺たちを巻き込んだってか?」
「…………はっはっは殺ス。」
「冗談じゃないわよ……」
 いつの間にか真剣を構えてガウリイににじり寄る先輩二人とサミィ。
「はいじゃあ頑張って破弾撃」
 どばああぁぁぁん!
 あたしの攻撃呪文がガウリイをふっ飛ばし、反撃を許さない。すかさず他のみんなが攻撃をする。ひとまずガウリイがぼろべろになったことをお知らせしておく。

 そのあと先輩達とすっかり仲良くなったあたしたちは六限の授業をエスケープし、屋上で落ち合う約束をした。

「──俺はルーク=ダンクス。総合魔術学科の三年だこっちは俺の」
「あなたのじゃありません。私はミリーナ=エルスタンス。同じく総合魔術科の三年です」
 稲妻の速さでツッコミを入れつつ、憮然として言うミリーナ。
「俺はケイン=ブルーリバー。古代機械文明の三年だ」
「…………その格好は一体何なんだ」
 ゼルが全員の疑問を口にする。
「このかっこうのどこがおかしいってぇんだ!
 ──大体、横に俺と同じ様なかっこうしたのがいるじゃねーか!!」
 いちいち立ち上がり、黒いマントを翻し、ケインはあたしを指さして言った。
「あのねえ、あたしは魔道士なの。なんでトラコンが黒マントなんて着てんのよ」
「──シュミだっ!」
 自信満々にどきっぱりと言い放つ。
 あ。トラコン、というのはトラブル・コントラクターの略で、厄介ごと請負い人ようは何でも屋のことだ。
「──私たちを無視しないでくださいっ!」
「そうですよぉ!! こんなの正義じゃありませんっ」
「私たちも一緒にいることを忘れてもらいたくないものだ」
 憤慨して言ったのは、ケインの連れの銀髪の女の子とアメリア、サミィが連れてきたこれまた銀髪の男の人だった。

「私はキャナル=ヴォルフィード。古代機械文明二年。宇宙船ソードブレイカーの管理者にして、ケインの身のまわりのお世話をしてます。
 ……本当はもう一人ミリィっていう連れが居るんだけど……」
「をい。ダレがダレの身のまわりのオセワをしてるって?」
 横で文句を言うケインと同じくらい不思議なかっこうをしたキャナル。
「──総合魔術二年、リナとゼルガディスさんの友達のアメリアですっ!」
 何故かフルネームを名乗らないアメリア。
「現代兵器研究二年、イーザー=マリオン」
 無表情に言うイーザー。この人知ってる。いつも給食と購買で選ぶ食べ物があたしとかぶる人。
 ひとまず全員の紹介が終わり、あたしたちは他愛ない話で盛り上がっていた。

「ほほほほほ! この私の講義をすっぽかしたから探しにきてみれば、こんなところにいたのね」
 常人より一オクターブは高い声を響かせ、それはやってきた。
「──なっ! 何っ!?
 この無駄に不快な高笑いは!!」
 なんだか嫌な生物を思い出し、あたしは叫んだ。

「誰が不快よっ! それはどうでもいいとして、なんて迷惑な組合せが集っているのかしら。
 うちのシェリフスターズに、スレイヤーズ、ロスト・ユニバースまで居るじゃない」
 うわ。いきなし現れた変なヒトに迷惑とか言われたよ。
 その現れた人は、緋色のブレザーに白の手袋とスラックス。手でポインターをもてあそぶ、なんか総攻撃な女性だった。
『──は?』
 あたし達の声は見事に唱和した。
「一体何のよう? クイーン。
 ……それに、シェリフスターズはわかるからいいとしても、他のはいったいなんなのよ」
 サミィはその女性に話しかけた。
 名前…………クイーンっていうんだ。本名じゃないよね。
「──別になにも用は無いわよ。
 その名前は、各科で校舎を破壊しまくってる生徒につけられる名前よ。
 たとえばリナ=インバース、あなたレゾ先生の研究室……完全破壊したでしょ」
「──うっ!」
 それがレゾにバレて、ねちねちと嫌味を言われた挙句、反省文を七百五十枚も書かされたのはまだ記憶に新しい。
「…………お前が壊したのかよチビガキ! おかげでレゾがよけいしつこくて大変だったんだぞ!!」
 恨み言を言うルーク。
「ルーク=ダンクス、そういうあなたも物理実験準備室を破壊したでしょ」
「──げっ!?」
「へっへえぇぇぇん! あんたゼロスの住処破壊したんだぁぁぁ!!」
 ゼロス、というのは物理の教師で、いつも悶々とその部屋に篭もっているため、いつしか物理実験準備室にそんな名前がついてしまったのだ。
「他にも…………」
 最終的に、あたしたち全員が少なくとも一度は校舎を大規模破壊していることが分かった。


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いつかはやってみたい企画

仲良しメンバーで集まって、スレイヤーズカラオケやってみたい。
でもスレイヤーズ以外も歌いたいから結局アニソンカラオケ。