誘拐
ガウリイが五才のときだった。友達と一緒にかくれんぼをしていたところ、ガウリイが誘拐された
急に屋敷に顔を出すようになった、という使用人たちの目撃証言から、父エルディオの一番下の妹で、町外れに一人暮らしをしている叔母ラディの犯行だと発覚。
「母親のいない家庭で育つよりも、わたしが育てたほうがいいでしょう!」
……おそらく、ガブリエフ家の中での権力を狙ってのものだろうとエルディオは察した。
実際、リエッタは夫婦でバルディをずいぶんと猫かわいがりしているようだし。
独り身でずっと町外れのガブリエフ家の別宅に暮らしているラディは、ガブリエフ家での権力などないに等しい。もちろん財産も。
──だが、後に後継ぎとなるガウリイをほだしておけば、その限りではないと目論んだのだろう。
そして、ガウリイに降りかかる災難はまだ続く。
バルディ八才、ガウリイ七才の夏──
「お母さんはお前のせいで死んだんだ! お前なんていなくなればいい」
「……オレのせい? お母さんが死んだの、オレのせいなのか?」
大声で責められ、しゃくりあげるガウリイをバルディはなおも責める。
「どこかにいけ! このヤクビョウガミ!」
「──ひ、ひっく、ひっく。オレ、や。やくびょがいじゃ、じゃないい」
伝説の剣士のように長く伸ばした金髪をふるわせて、ガウリイは兄に反論してみせる。
「お前はヤクビョウガミだっておばさんが言ってる! お前がいなければみんな幸せだったのにって!!」
「……うわあーん!」
ただでさえ身内から冷たく扱われていたガウリイを、実の兄さえものけ者にし始めた。
ガウリイの味方は、たまに城から帰ってくる父エルディオと、専属のメイドだけ。
それでもガウリイは、その軋轢さえもバネにする。
……オレも、伝説の光の剣の剣士のように、優しくて強い剣士になるんだ。
そんな息子たちのことを不審に思ったエルディオは、バルディに問いかけた。
「──どうしてそんなにガウリイのことを嫌うんだ? たったひとりの弟だぞ」
バルディは肩をいからせて答えた。
「あいつのせいで母さんが死んだんだ! どうして父さんもあんなやつをかばうんだよ!」
「違う! どこでそんなことを覚えてきた!」
思いがけない返答に思わずエルディオも熱くなる。
「おばさんもおじさんも言ってる! 全部あいつのせいだって。あいつなんていな──」
バシッ
「──お前……弟になんてこと言うんだ!」
「あいつの味方ばかりするお父さんなんて嫌いだ!」
「……すまない、ガウリイ」
「お父さん?」
「俺がもっとしっかりしていれば……こんなことにはならなかったかもしれん」
「???」
意味がわからない……といった顔のガウリイ。
一族のほぼ全てがガウリイを認めていない。
次期ガブリエフ家頭首として、光の剣の継承者として……そして、一族の人間として。
「──ガウリイ、お前の好きな光の剣の剣士のように、強くなりたいか?」
「うん!」
「だったら──」
