招かれざる客
エミリアとガウリイが本格的な剣の師弟となって、一年が過ぎた。
さすがというかなんというか──ガウリイはめきめきと剣才をあらわし、若干十三才にしてエルメキア兵五人くらいならあしらえる程度の実力がついた。
それでも毎日の水汲みと薪割りは欠かさず、さらに剣の鍛錬をしている。
「──ずっと思ってたんだけど、エミィばあちゃんさぁ……どうしてそんなに強いんだ?」
「ガウリイ、お前──! 誰からも聞いていないのかい!?」
「んー?」
ガウリイはトマトのパスタを口いっぱい頬張りながら顔をあげた。その顔を見て毒気が抜かれてしまった。
「……いい。明日ガブリエフ家に行ってエルディオからきちんと話をさせようじゃないか」
「んう、むあかった」
「口に物が入ったまましゃべるんじゃないよ」
「オレが……光の剣士の末裔!?」
「……そうだ」
エルディオは険しい表情のまま答えた。
「あたしの両親がね、その伝説の光の剣士だったんだよ──その母親からの遺言で、ガブリエフ家に代々伝わる光の剣は、金髪碧眼の人間に伝えられることになっている。
今ガブリエフ家で金髪碧眼なのは……あたしと、ガウリイだけさ」
「じゃあエミィばあちゃんは光の剣を持ってんのか!?」
「ああ、そうだよ」
「それで……エミィばあちゃんの次はオレに!? すっげぇ! オレ光の剣の剣士だ!」
大きな体でまるで子供のようにはしゃぐガウリイ。
「──で、なんでそんな大事なことをガウリイに隠してたんだい」
エミリアは小さくなっているエルディオを睨みつけた。
「……いや……その」
「言い訳はきかないよ」
「………………最初は、バルディに継がせるつもりだったんだよ」
目をずいぶんと泳がせながら、エルディオは気まずげに答えた。
「バルディ? ──あの子は金髪碧眼じゃないじゃないか」
「あの……えー……ガブリエフ家にはもう長いこと金髪の人間が生まれていないだろう? だから、もうこの際諦めようかって兄弟で話してたんだ……」
「──なんだと!? ……お、お前は、大ばあさまの、遺言を無下にしようとしたのか!!」
エミリアは顔を真っ赤にして、激昂した。
「だ、だからガウリイが生まれたから今までどおりにして、ガウリイに後を継がせようと思ってはいたんだけど……」
エミリアがよほど怖いのだろう。大の大人が老婆相手に小さく見える。
「なんっという恥さらしだ!」
「……エミィばあちゃん、もういいよ」
ガウリイが肩を叩くと、いまだ怒りの収まらぬエミリアは踵をかえして屋敷を後にした……
「すまないね」
「いいんだ……そういうことにはもう慣れた」
エミリアもガウリイも、瞳にはわずかに悲しみの色をたたえていた。
「──なんだいこれは!?」
「泥棒か?」
国境付近の家まで戻ると、ドアが破られ、家の中がめちゃくちゃにされていた。
カーテンが引き裂かれ、食器が散乱し、エミリアお気に入りのソファがズタズタにされている。
そして家の中には──
「どこへいってたんだ、遅かったじゃないか!」
「おれの光の剣はどこだ!」
ガウリイの叔母にしてエミリアの孫、リエッタと……兄バルディであった。
