後継者
兄、バルディ=ガブリエフ三才。弟、ガウリイ=ガブリエフ一才十ヶ月。
光の剣の正当な後継者として生まれたガウリイは、一族の中でもてはやされる──ということはなかった。
一族は遺言をなかったこととして光の剣を長男バルディに継がせるつもりで話をしてしまっていたし、金髪碧眼の光の剣士様! と周囲からの期待がかかるのをかえって疎ましくすら感じていた。
だが、金髪の子が生まれてしまった以上、おそらくこの子に継がせないといけないのだろう。でないと……現在光の剣を所持しているエミリアがそれを許さない。
そして──ガウリイが二才なった十日後、事件は起こった。
母ルリエラが失踪した。
いつも母にべったりだったガウリイは泣き喚いて母を家中探し回るし、バルディは何が何だか分からない様子でいると、普段から家に出入りしていた叔母がバルディだけを慰め、連れて行った。
……ルリエラは三日後に見つかった。
ガブリエフ家の敷地内にある使われていない物置で首をくくっているのを、たまたま掃除にきたメイドが発見した。
それからは慌ただしく葬儀をとりおこない、バルディもガウリイも幼すぎたため『死』についてはあまり理解できなかったようだ。
ただ、『大好きだった母にはもう会えない』ということだけは理解した。
それ以来バルディはふさぎがちになってしまい、エルディオの妹でよく家に来ていた叔母のリエッタがなぐさめていた──失踪したときと変わらずガウリイのことは無視していたが。
ガウリイは無視されることを特に気にしてはいなかった。ガウリイも同じようにリエッタが嫌いだった……いつも母ルリエラを罵倒していたから。
なぜ今になって金髪の子を生んだ……誰にも言わず捨ててこい……ガブリエフ家の遺産目当てで嫁いで来たのだろう……この金髪はうちの家の血ではない、誰の子だ……
ガウリイには意味はよく分からなかったが、これを言われると母がひどく悲しげな顔をする──それだけで子供が人を嫌いになる理由としては十分だった。
この頃から兄バルディは剣術を学び始めた。ガウリイはそれを見よう見まねで真似してみたが、リエッタに見つかると叩かれるので隠れて真似した。
リエッタには心を開いていたバルディは、言われるままに剣術の練習をした……といってもまだまだお遊びの延長のような剣術だが。
それでも少しずつ、バルディは上達していった。
……そして、それは見よう見まねで練習していたガウリイも同じように。
小さいながらに、金髪碧眼の光の剣士はここに誕生した。
強く──誰よりも強くなるために。
