新井みりんによる神坂一作品の個人ファンサイト。

旅路

「まだまだ……」
 あたしたちが出発して二日目の夜。
 夕食を済ませた後、あたしは町の外の森でガウリイと剣の練習をしていた。──ちなみに宿はゼルとアメリアにとってくれるよう頼んでおいた。
 あたしとガウリイは木の枝で打ち合いをしていた。
 ……それにしても、あたしも剣のウデは上達したと思うのだが、ガウリイには遠く及ばない……というよりも、力の差がひらいている気さえする。
「……ふっ!」
 あたしは汗だくになりながらかなり打っているのに…………一発としてガウリイに当てることが出来ないのだ。
 今も思い切り打ち込んだのに、うまく受け流される。
 ぺしんっ
 あたしの肩にガウリイの振るった枝が軽くしなって当たる。
「くっ! ……ていっ!」
 あたしは思い切り枝を振り下ろす。
 かんっ
 カルい音をたてて受けられる。
「惜しい。もうちょい!」
 少し息を吐きながらガウリイは言った。
 ぱちんっ
 あたしの腰の辺りに再びガウリイの枝が当たる。
「おにょれぇっ! たぁっ!」
 今度はあたしがガウリイの脇腹あたりに向かって枝を振るう。
「──力みすぎだ。よっと」
 ぴしんっ!
 ……カウンターであたしの頭に当たる……。
「ああっ! もういいっ! 休憩よっ」
 ……あたしはかなりへばっているとゆーのに…………ガウリイは軽く息を切らしているだけ!? あぁむかつくっ!
 ガウリイはあたしの横に座り、いつもみたいにあたしの髪の毛をくしゃっとなでる。
「一発一発に力みすぎなんだよ、お前さんは。オレがかるく相手してるっつったって、ムキになるな」
「……だって、もう剣の練習してかなり経つのに、ガウリイに全然追いつけないんだもん……」
 ガウリイは小さく息をついた。
「お前さんはもう十分強くなってるよ。リナが追いつけないと感じるのは、オレがある程度力を出して相手してるからだ」
「何ソレ。自慢してんの?」
「──いやいや、そういう意味じゃなくてだな。今のリナを相手に力を抜きすぎると負けるかもしれないから、そんなカッコ悪いことにならないよう、ちょっと本気を出してるんだ」
「……ふーん。よくわかんない」
「もうだいぶ遅いから、宿に帰るか」
 言って立ち上がると、あたしの方を向いてしゃがみこむ。
「……何?」
「……どっこい、せっと」
 ひょいっ
「──ガウリイっ! 恥ずかしいでしょっ!?」
 ……何があったのかとゆーと、こいつはあたしを……お姫様だっこしやがったのだ。
「だって疲れてんだろ? 宿まで運んでやるよ」
「やだっ! おろしてっ」
 この間もあたしは必死で暴れているのに、ガウリイはさして気にしたふうもなくずんずん町の方に歩いていく。……こーなったら……。
「……ん? 大人しく運ばれる気になったのか──って、あれ?」
 ぶちぶちぶちぶちぶち……
「何言ってんだ? リナ」
「……ぃ……いなる……じに名に……我ここに闇に誓わん! 我等が前に立ち塞がりしすべてのおろかなる──」
「──わー! リナっすまん。オレが悪かった! だから竜破斬はやめろおっ!」
「……ふんっ。分かればいーのよ! ──じゃーおんぶして連れてって」
「──は?」
 死ヌほど間の抜けた声を出すガウリイ。
「おんぶして連れてって、って言ってんのよ。……さすがに疲れてて、歩く元気はまだ無いのよ」
「へいへい。じゃあ背中におぶさってくださいよ」
 みょーにじじくさい口調でそう言うと、ガウリイがあたしの前に今度はあたしに背を向けるかたちでしゃがむ。
 あたしはほとんど倒れこむようにガウリイの背中におぶさった。
 ……ガウリイの背中、広くてあったかい……

「…………な。……リナ! 起きろ! 何か様子がおかしいぞ」
 むぅー……人が気持ちよく寝てるのに……
 どうやらあたしはガウリイの背中で熟睡をしてしまったらしい。
「……ガウリイ、いったい何がどー変だってぇのよ……?」
 ここはおそらく宿屋の廊下で、何一つ変わったところはないが──?
 ──!──
 不意に、あたしの背筋に寒気が走った。……いや、この寒気とはどこかが違う感じは──瘴気。
 反射的にあたしはガウリイの背中から飛び降り、呪文を口の中で唱えはじめる。
「開けるぞ」
 あたしが降りると同時に腰の斬妖剣を抜いていたガウリイは勢い良くドアを引き──固まった。
 ドアを開けたその向こうに在ったのは──いうならば、物質的な闇。
 まるで黒霧炎の呪文によって生まれる闇をもっと高密度にしたような──だが!
「──青魔裂弾波!」
 とっくに唱え終わっていたあたしの呪文が闇を突き抜ける!
 ──はずだった。
 じゃあっ
 まるで熱した油に水を入れたような音がしてあたしの呪文は『闇』に触れ、かき消された。
 ──なっ!?
「リナ! 来るぞっ!」
 ……たとえこの廊下が狭くないとはいえ、あんまし有利な状況とは……さて、どうしたもんか……
「──リナっ! どうしたのっ!?」
 隣の部屋から無駄に元気良く飛び出してきたのはアメリア、その向かいの部屋からはゼルも出てくる。
 さすがというかなんというか、二人とも戦う準備は整えている!
「そこそこの魔族よ! 油断は出来ないわ」
 振り向いて言うあたしの言葉を聞き終えるより早く、二人は呪文を唱えはじめる。
 ──その間にも、あたしの後ろでガウリイは出てきた魔族と戦っているのだが……うをっ。
 どーしてなかなか見た目がユカイな奴である。
 ……なんつーか……黒くてでっかいフェアリーソウルに、台所に一匹は居そうな虫の足が場所も向きも関係なく生えている。とゆーような表現が一番近いだろう。
 ……しかしこいつ、なかなか強いぞ!
 ぎっ きぃん!
 まったくもって気色の良くないその足で、ガウリイの攻撃をことごとく受け止めているのだ。
 だが、後ろの二人の呪文はすでに完成している!
「──ガウリイ! さがって!」
「おうっ!」
 ガウリイは大きく後ろに飛ぶと同時に、ユカイなソレは追撃をかけんと追いすがる。が、遅いっ!
『崩霊裂!』
 あたしの後ろでアメリアとゼルの声がハモり、ソレは蒼い火柱に包まれる。
 そして、赤い砂のようになり、微かな風に溶けて……滅びた。
 …………そういや特訓で疲れていたとはいえ、あたし楽したなー。ま、いいか。
「──はーっ助かったわ。二人ともさんきゅ」
「いつものことだ。礼には及ばん」
「そーね、これくらいでお礼を言われるくらいじゃ、いままでの分とこれからの分は一生かかっても足りないし」
 うあ、うぜぇ。

「──リナさん、ちょっと外に来てもらえませんか?」
 どこからか、ゼロスの声が聞こえた。
 あたし以外には聞こえなかったらしい……どうやら、意図的にあたしだけに聞こえるように細工したようだ。
 部屋に入る三人を見送り、あたしは外へ向かった。
「リナさん」
 宿の入り口の大きな柱に、ゼロスは寄りかかっていた。いつもの人なつっこそうな笑顔で。
「──何なの? ゼロス。夜更かしは美容の大敵なんだけど」
「すぐ済みます。これを受け取っていただきたくて」
 そういってゼロスが差し出した手の中には、かなり大きな呪符とおぼしきものと、にぶく輝く指輪があった。
「……まー。もらえるものならもらうけど、何なのよこれ?」
「リナさんに渡せ、といわれたのがこの呪符。
 指輪は、僕からのプレゼントです」
「……それもそーなんだけど。これは一体何で出来てるの?」
 あたしがそう思うのも無理はない。
 いくら月の明かりで照らされているだけとはいえ、この目利きリナちゃんの目はゴマ化せない。
 呪符は金色の何かをベースにすごく大きい宝石がひとつあしらってあるもの。
 ここまでは指輪も似たようなものなのだが──
 ──その宝石が問題のもの。なんというか、金を透明にしたような感じで、じっくりと見ていたら吸い込まれそうである。
 しかしゼロスは気まずげに言った。
「……いやぁー……
 ……ちょっとある方からの命令で……それが増幅の呪符であるとしか言えないんですよ」
「……じゃあ指輪は?」
「それは単なるお守りです。
 ──ほら、人間って大事なひとに指輪をプレゼントするじゃないですか。その習慣をまねてみたんですけど……」
 ──どこまでも人間臭いやつ。本性は完璧に魔族なくせして。
「……まぁいいわ。せっかくくれるってぇのを断るわけには……ね♪
 ──で? 増幅の呪文は? ……めちゃくちゃ長かったりとかしないわよね?」
「それは──」

「…………前のやつよりは短いし簡単だけど……この力の源ってまさか──」
「次は指輪の説明ですね」
 あたしの疑問を無視して勝手に話を続けるゼロス……まさか本当に……?
「この指輪はさっきもご説明したとおりお守りなんですよ。なんでも持ち主の意志力を感じ取って、その人の運命を変えるんだとか」
「……うさんくさ……」
「僕もそう思います」
 うわきっぱり言いやがったよこの人は。人じゃないけど。
「で、これはどこで手に入れたのよ」
「……それは──」
「──はいはい。秘密なのね」
 ゼロスは一瞬顔を歪め──
「リナさんひどいっ!」
 言うとゼロスは半泣きで宿の中に入っていった。
 …………おまいは伝承歌のお姫様かいっ!

 ややあって、あたしはふたたび森の中に居た。
 ──ものはためし。この呪符の増幅効果がどれほどのものか分かっていないと好き放題呪文も使えないし。
 あたしはいつか見た竜の峰を連想させるような、山が連なる方を向いていた。
 ……やるなら最初は竜破斬あたりかなー……あくまで実験のため。信じてぷりぃづ。
 まずは新しい増幅呪文を唱え、混沌の言葉を紡ぎ、『力ある言葉』で呪力を開放する!
「竜破斬!!」

 ちゅどどどどおぉぉぉぉおおんんん!

 あたしは愕然とした。
 まだ耳に残る衝撃音と、目に灼きついたまるで太陽のような爆光。──そして何より、一撃で消えうせた山々が呪文の凄まじさを物語っていた……
「──いやぁー。見事です、リナさん!」
 さすがのゼロスも感嘆の声をあげる。
「……気配消して近づかないで。ゼロス」
「──では、今度から気をつけます」
 見えるはずのない背後の影が、かるく礼をしたのが視えたような気がした。
 さて、竜破斬での威力はわかったからいいとして。次はどの呪文を試そう……?
「ねぇ……ゼロス、この呪符で神滅斬とか使えると思う……?」
「さぁ? どーでしょーねー」
 気合いも根性も抜けまくったよーな返答。
「──ま。駄目だったら駄目で、なんとかなるでしょう!」
 あたしは増幅の呪文を唱え、神滅斬の未完成版を唱える。

 ──天空のいましめ解き放たれし
 凍れる黒き虚無の刃よ
 我が力 我が身となりて
 共に滅びの道を歩まん
 神々の魂すらも打ち砕き──

「神滅斬!」
 ぶわぁっ
 あたしの右の手の中に、闇の刃が現れる。
 ──しかし、なんて力……!
 消費は以前の完全版の呪文より少し少ないくらいと多少きつくはなったが──威力は完全版の術でさえはるかに凌ぐぞこりは……。
 ………………ゼロスで試し斬り……とか駄目か。さすがに。
 ばさぁっ
 あたしは右手に存在していた混沌の刃を虚空へと還した。
「……ふぃーっ! 前の完全版より楽とはいえ、さすがに疲れるわね……」
 あたしはぺたんっと地面に座り、両手両足を投げ出し、心地よい睡魔に身を任せた…………

 目が覚めたのは、なぜか暖かいベッドの中だった。
 ……ゼロスか……まあいいや……
 仕度を整え、食事をしようと部屋のドアに手をかけた瞬間──!
 づぶりっ
 ──どぉげっ!? あたしの手がドアにめりこんでるっ!
 『ドア』はあたしを飲み込もうとなおも引っ張り続ける。
「──たっ助けてガウリイー!!」
 言う間にもあたしは肩まで飲み込まれる。
「──リナっ!? うわっなんだこりゃあ!」
 あたしのあげた悲鳴に駆け付けたガウリイは何とか部屋の中に入り、あたしの左腕を引っ張る。 ──だが、ドアの引っ張る力のほうが強い。というよりも、馬鹿力なガウリイがあたしの清楚かつ小柄で華奢なこの身体を本気で引っ張って大丈夫なわけがないのを本能的に悟っているのだろう。
 もはやあたしの右半身は完全にドアの中である。
 急ぎ早口で呪文を唱える──が、ドアがあたしの身体をかけのぼり──ああよくも乙女の柔肌をってまさか!
「──ガウリぐむっ」
 ……苦しっ! 呪文を唱えさせまいと頭まで覆ったか!?
 すると目の前で何かが動く気配、剣を鞘から抜く音。おいおいガウリイ、斬る気かい!
 どむっ
 だがやたら鈍い音がしただけで何の変化もない。
 ──このままじゃまずい!
 そう思ったとき。
 ぶわっ
 多少身動きができる程度にドア魔族が押し広げられ、まわりの空間が広がる。
 ──何故?──

「……だいじょーぶですか? リナさん。
 大変なところでしたねー。でも、こんなにタチの悪い魔族もいるんですねぇ」
 ……お前も魔族だろ……
「僕としては一刻も早く赤の竜神の騎士のもとへ行きたいんですけど……
 敵さんも、簡単にそうさせてくれそうもありませんねぇ……」
 いつもながらののんきな口調で言うゼロス。
「──今度は誰があたしを狙ってんのよ」
 言いながら思ったが、魔族の腹(?)の中でおしゃべりとは、なかなか余裕である。
「……うーん、だれ、というよりは……上層部の仲違いに近いですね。困ったもんです、はっはっは。
 ──最近の赤眼の魔王様の復活には必ずリナさんが関わっている。そして今回見つかった方もあなたの良く知っている人。
 これであなたが首を突っ込まないわけがなく、僕たちとしてはしばらくそっとしておいてあげたいんですよ。
 ただでさえ立て続けに上の方が減って景気が悪いのに、やみくもにリナさんにケンカを売って返り討ち、なんてことではどうしようもありませんから。
 ……ですが、覇王グラウシェラー様が動けないにもかかわらず、あなたへの復讐を残った部下たちにさせようとしているんです。
 最近、北の魔王様と意思の疎通がとても難しくなったのだとか。それも手伝ってこのような状態になっているわけです」
 赤眼の魔王復活!?
「──ちょっとそれ! どういうことよっ!?」
 思わずあたしは、ゼロスの胸ぐら掴んでがっくんがっくん揺さぶる。
「ど、どーゆーことって話したとおり、魔王様が封印されている人が見つかったんですよおぉ。」
「──それがまさか、実家の姉ちゃんなわけはないでしょ!?」
「さすがに違いますよぉ」
「じゃあ誰よ」
「それは……秘密です」
 あたしは小さくため息をついた。
「……話はおーむね理解できたわ。話がこれだけなら、ここから出るわよ。いつまでも魔族の中にいたんじゃあ、気分悪いわ」
「──じゃあ頑張ってくださいね」
 言うとあたしの前から姿を消す。魔族お得意の空間転移、である。
 ったく、本当に役に立たない中間管理職のパシリ魔族である。

 ……しかしこいつは斬妖剣でも弾いてしまうほどタフなやつ。加えてこの狭さ。
 ……この術しかないか……

 ──全ての闇を束ねる王
 汝の無より生まれしものに
 星々を無に還す力を与えよ──

 増幅呪文に導かれ、あたしの身体中──いや、あたりの空間全てに魔力が満ちる!
 胸元につけた呪符が、まばゆく、恐ろしいほどの力を感じさせる光を放つ。

 ──悪夢の王の一片よ
 世界のいましめ解き放たれし
 凍れる黒き虚無の刃よ
 我が力 我が身となりて
 共に滅びの道を歩まん
 神々の魂すらも打ち砕き──

「神滅斬!」
 ──一瞬、術は発動しなかった。
 だが次の瞬間!
 ヴッヴヴヴヴヴヴヴィィィイイイイ!
 空間を、世界を、激しく震わせ、あたしの右手に『混沌』は生まれた。
 それはあたしの体力を、魔力を、精神力を。そしてあたしの魂をも喰らう。
 ──そう、いつか見た。金色の闇。それがあたしの手の中で暴れていた。
「──でええいっ!」
 ぞぶっ
 あたしが振るった神滅斬の前に、ドア魔族は手ごたえも無く滅び去った。
 開放されると、あたしはその場にがっくりと膝をついた。
「──怪我はない……みたいね。だいじょうぶ?」
 怪我が無いことで多少安心したのか、落ち着いたようすで話しかけてくるアメリア。
「──っリナ! ……大丈夫か?」
「──!? おい! その髪!!」
 ガウリイとゼルがあたしの髪の毛を見るなり、表情を強ばらせたのをあたしは見逃さなかった。
 二人が驚いた理由、それはあたしの髪の毛の色が変わっていたのだ。自慢の栗色から、完全な銀髪へと。
 この副作用は重破斬を発動した時にも出る。それを知っているからこそ、ガウリイとゼル、この二人の表情は強ばったのだ。
 …………確かに…………つかれた…………

 ──カタートで我が王がお待ちです──
   遠く、近く、不安定に響くゼロスの声。
 ──そうか──
   話しているのは誰……?
 ──我は既に同化して力を得ている。あとは時を待つだけだ──
   ……同化……?
 ──ふふふ、そのようで。まさかそのような身体に転生をしていようとは──
   楽しそうなこの声は……いつか聞いた……海王……?
 ──我は必ずや復活を遂げ、世界に滅びを撒く。そのためには──
   ……そのためには……?
 ──この人間達には消えてもらおう──
   ふと……頭の中に映像が浮かぶ……どす黒い血溜まりの中に沈む……これは……妄想なのか……それとも未来視なのか……よくわからない……
 ──あとは、時が満ちるのを待つだけ。ですか──
   ……なぜか面白くなさそうなゼロスの声……
 ──その通りだ。我がこの魔力を以てこの世界に復活すれば、他の地の竜王など敵ではない──
   ……赤眼の魔王……シャブラニグドゥ……!

 あたしが目を覚ました時、ベッドの周りには三人が居た。……ゼロスが居ない……?
「それにしても、ゼフィーリアに向かう前からこの状態で……ゼフィーリアに着いたら魔族がダース単位でかかってくるなんてことはないわよね」
「……うるさいわよ……アメリア……」
 まだ眠い目をこすりつつ、あたしはゆっくりと身を起こした。
「……おい、昨日何の術を使ったんだ」
 …………さすがはゼル。スルドイ。
 ──とゆーか、昨日? どーやらあたしは丸一日眠っていたようである。
 そのお陰か、あたしの髪の毛は薄い金髪程度に色が戻っている。……まぁ自慢の栗色には程遠いが。
「……昨日ドア魔族を倒したのは神滅斬よ」
 嘘を言ってはいない、だが真実全てではない。ゼロスのような答え方をした。
「……じゃあ今度はわたしから質問ね。
 その胸元の呪符、どうしたの? この間まではつけてなかったわ」
「ゼロスからもらったのよ。魔血玉の呪符の代わりに……ってね」
 今度は正直に答えた。
「──もう朝なんでしょ? 宿を出ましょう。道すがら、全部話すわ」

 そしてあたしは次の町を目指しながら、ある程度のことは話した。

 それからしばらく、魔族からの襲撃は無かった。
 ──そして──ゼフィーリアまであと半日、という大きな街道で……それはやってきた。
「……リーナさん♪」
「さぁ急ぎましょうか」
「りなさぁぁぁん」
「──やかましいっ!」
 いきなり現れたソレの首を、あたしは予備動作無く締め上げた。
「……ぐ、ぐるじいでず……りなざーん……」
「だいじょうぶ。あんたは魔族なんだから首を絞めたくらいじゃ死なないわ」
 魔族──そう、いきなし居なくなりやがったゼロスだった。

 ──!?──
 あたりに殺気が満ちた──その主は、一人の女性──?
「……おやおや。あなたの上司も、ずいぶんとあきらめが悪いようですね」
 いつの間に抜け出したのか、ゼロスが言いながら歩み出た。
 ……上司。つまりゼロスと同程度の魔族。
「ゼロス様。私とてあなたと戦りあうつもりはございません。
 その女──リナ=インバースを引き渡してくだされば、それでよろしいのですが……」
「エリアンヌさん。僕とて獣王様の命令に従っている立場ですから……
 ……リナさんを引き渡すわけには、いかないんですよ」
 そして、ゼロスとエリアンヌと呼ばれた魔族の間に先程以上の殺気が渦巻く。
「──リナっ! 伏せろっ!!」
 一瞬、視界が塞がった。
 理解したのは、ガウリイの血があたしの服を濡らした時だった。
「……っガウリイ!?」
 ガウリイは隠れていたもう一匹の魔族からの攻撃に気が付き、自分の身を挺してあたしを護ったのだ──
「──アメリア! 早く復活を!!」
 悲鳴に近い声をあげ、あたしは呆然としていたアメリアに声をかけた。
 ガウリイの傷は、深い。復活でも間に合うか……!?
 あたしの手袋には、べったりと血が付いている。それをマントで乱暴に拭き取ると、攻撃があったであろう方向を見た。
「あっちゃー、外しちゃったよ……」
 そして街道の何も無いところから現れたのは……銀髪の男……こいつがガウリイを……!
「ゼル、やるわよ」
「ああ」
 言ってゼルは腰のブロードソードをすらり、と抜く。
「裂閃槍!」
 口火を切ったのは、あたしの呪文だった。いつの間にかゼロスも戦いを始めている。
 まずい。
 不利な状況が幾つかあるのだ。
 一つ、エリアンヌは容赦無く戦えるが、ゼロスはあたし達を庇いながら戦わなければならないこと。
 二つ、アメリアがガウリイの治療にかかりっきりで、そちらを狙われたら間違い無く二人の命は無いこと。
 三つ、おそらくゼロスと同程度の魔族相手にあたしとゼル二人で相手しなければならないこと。
 あたしがそんなことを考えていると──
「ぼくの名はグロウ。覚えなくてもいいよ。
 ……どうせ君達は死ぬからね」
 やたら友好的な口調で不吉なことをぬかす……グロウ?
「──その無駄に安直なネーミングセンスは……
 ……あんた! 覇王グラウシェラーの部下ね!!」
「へえ。やっぱりわかったか。
 ……そう、ぼくは覇王神官グロウ。覇王様の命にて、リナ=インバース、君を抹殺する。
 あ、あと安心していーよ。君たちと戦ってる間はあの二人を攻撃しないから」
 言ってアメリア達を指差す。……その余裕が命取り!
「崩霊裂!」
 ……だが、ゼルが唱えていた崩霊裂は発動しなかった。
「……なかなか卑怯な手を使うね。
 悪いけど、防がせてもらったからね」
 ……さすがは覇王神官、といったところか。
 あたしは以前、竜将軍の名を冠する魔族が崩霊裂と竜破斬を同時に打ち消したのを見たことがあった。
「裂閃吼(エルメキア・ブレス)!!」
 あたしには、呪符で魔力容量を拡大しないと発動しない術のストックが幾つかある。
 たとえば──神滅斬のように。
 そして、今使った魔法もそのうちのひとつで、以前の魔血玉では発動しなかった魔法なのだ。
 あたしのかざした手のひらから放たれた光の槍──いや、光の奔流は、覇王神官の右半身を消滅させた。
「──なっ!? …………がはっ……」
「──崩霊裂!」
 そして、ふたたびゼルが唱えた崩霊裂は、覇王神官を滅ぼした。
 ……ゼロスがエリアンヌを滅ぼしたのも、同時だった。
「──アメリアっ! そっちは!?」


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いつかはやってみたい企画

仲良しメンバーで集まって、スレイヤーズカラオケやってみたい。
でもスレイヤーズ以外も歌いたいから結局アニソンカラオケ。