信頼
「……よく俺なんかに背中を預けられるな」
斬りかかってきた狂戦士を逆に斬り伏せつつ、ゼルガディスは言った。
あたしとゼルガディスは狂戦士二十人ほどに囲まれていた。
いきなり背中合わせになったあたしに驚いたようだが、敵に囲まれてしまった以上離れて戦うことは自殺行為に近い。
「だいじょーぶだってわかってるもの。あたしは大事な人質なんでしょう?」
──そう、あたしは彼の人質なのだ。
絶大な威力を持つ増幅器『賢者の石』を手にするための。
「それに、魔力もろくにないこの状態で敵に出会ったらひとたまりもないしね」
言いつつ氷の矢で狂戦士を一人氷づけにする。
「……それだけで背中まで預けるか、普通」
「人を見る目はあるつもりよ」
ショートソードを抜き、剣を受け流し、そのスキによろけた狂戦士の腹に蹴りを入れる。
「──あんたをさらったやつを信用したのか」
「まあね」
そしてあたしたちはアトラスへと向かう。
「……またあんたとこんな風に戦うハメになるとはな」
「なんのこと?」
あたしたちは魔族からの襲撃をうけていた。
いきなりの襲撃だったため、ガウリイとアメリアとはだいぶ離されてしまった。
作戦を立てていたわけでもないのに自然とあたしたちは背中合わせになり、周囲の気配を探る。
「単なる独り言だ」
「そう──黒妖陣!」
「冥壊屍!」
あたしの呪文を避けた魔族の逃げた先にゼルが最高のタイミングで呪文を放ち、魔族は滅びた。
「──さすがゼル! ……信頼してるわよ」
「そりゃどうも」
肩をすくめてみせるゼル。
「信頼…………か」
