魔道書
「──なあリナ」
「んー?」
暇だからとガウリイが部屋に入ってきて、ベッドに寝っころがりながら魔道書を読んでいるあたしの横に座っていた。
「そんな本読んで面白いか?」
「んー」
ぺらり
あたしの指先でふわりとページがめくられる。
「……なんかうまいもんないのかな」
「んー」
「胸ないな」
「んー…………ん?」
どかっ
「──っぐおぉ……!」
あたしが無言のまま放った蹴りは無防備なガウリイの脇腹に見事突き刺ささり、問答無用で悶絶させた。
よほど痛かったのか、ガウリイはしばらくテーブルでひとりいじいじとしていた。
「……リナー……」
「んー」
「かまってくれよー……」
「んー」
ばさっ
「あっ! ちょっ──ガウリイ!」
あたしはガウリイをぎらんっとにらみつけた。
あたしの手から魔道書が取り上げられ、その本は取り上げた本人──ガウリイの手におさまっていた。
「──返してよっ!」
「やだ」
ガウリイは意地悪く笑うと、頭の上でひらひらと本を掲げたまま部屋を出て行ってしまった。
「ガウリイ! 本返しなさいよ!」
ノックもせずあたしはガウリイの部屋に乱暴に入った。
「……返してください、は?」
「はぁ!?」
「返してくださいって言ったら返す」
言って挑発的にあたしの目の前で本を振ってみせる。
取ろうとすると獣並に反射神経の鋭いこの男は、ひょいっとかわす。
ついムキになり、そんなやりとりをしばらく続けたあと、ガウリイは今度は自分がベッドに寝そべって読み始める。
「……どうせわけわかんないでしょ」
「おう」
「──返して」
「やだ」
手をのばして取ろうとすると本はするりと遠くへ逃げる。
「ガウリイっ!」
「何か言うことは?」
「………………返して……ください」
むかむかむかむかむかむかむかむかむかっ。
「ほい、よく出来ました」
ぽすん、とあたしの手の上にのせると、本の間に何かはさまっていた。
「あ、ガウリイなんか──っていつの間にかいないし!」
はさまっていたのは紙切れで、流れるような筆跡でこう書かれていた──
たまには休め。
ずっと旅してたから……もしかして、気ィ使ってくれたのかな……?
ありがとね、ガウリイ。
