あの日
「うー……腹痛い頭痛い腰痛いだるいー!」
あたしはすさまじい身体のだるさに襲われ、ベッドに突っ伏していた。
……またきてしまった。地獄のような数日が。
女の魔道士、巫女、僧侶などの魔力が著しく減退する数日。
あたしはそれが特に激しいらしく、二日は完全に魔力がなくなる。
……まあ、それは処女ではなくなるからとかゆー魔道士の通説よりも、単に集中力の問題ではないかとあたしは考えているのだが。それはおいといて。
そんなことよりも、この後非常に気の重いイベントが待ち構えているのだ。
あたしの連れにそれを告白しなければならないのだ。
一緒に旅をして三年。頭の中身こそワラが詰まっていそうではあるが、剣のウデに関しては文句なしである。
……女ならまだ救われただろうが、あたしの連れは“男”なのだ。
以前ほどではないが、やはり恥ずかしいものは恥ずかしい。
──あたしはもう子どもの産める身体ですよ──
そういっていることとイコールなのだから。
だからといって、黙っているわけにもいかない。
あたしはここしばらく、魔族に狙われ続けている。
それを教えずにいつもの調子で戦われると、あたしは自分の身が守れず──間違いなく、死ぬ。
本当は、彼と別れ、一人で旅をしたほうがいいと思うのだが……
なぜかたいてい、多少強引にでも言いくるめられてしまうのだ。
…………しかたない……か。
宿の隣は彼の部屋だ。きっと剣の手入れでもしているのだろう。ドアの前でかるく深呼吸をする。
コンコンコンッ
「……入るわよ?」
「どうした?」
部屋の中からやや間延びしたような彼の声が応える。
ぎぎい
あまり耳に良くなさそうな音がしてドアが開くと、あたしよりもはるかに背の高い彼が不思議そうな顔をして立っていた。
「うん…………あのね」
あたしが言いかけた時──
「わかってる」
そういうとあたしの頭を撫で、にこりと笑った。
「──え?」
「わかってるから」
彼はそれだけ言うと、あたしに自分の部屋に帰るように言った。
……まさか……数えてるわけないわよ……ね?
そんなことを悶々と考えつつ、あたしは部屋の中をぐるぐると歩き続けた。
「……そりゃあ『あの日』がくるたび腹痛いだのどこが痛いだの騒いでりゃあなぁ……それに……」
──痛みを必死に堪える愛しい少女の顔の変化がわからないわけがないだろうに──
